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3・11を彷彿とさせるディストピア。吉村萬壱著「ボラード病」をレビュー。ネタバレなし。

みなさん、こんにちは。

相変わらず、ディストピア・ポストアポカリプス系の作品が好きな私です。

今回は、吉村萬壱さんの「ボラード病」を紹介したいと思います。 

 

 

 

作品紹介

あらすじ

B県海塚市。ここは過去に大規模な災害があった街。

海塚市民は心を一つにして、この街を復興させようとする。

海塚産の野菜や魚を食べ、街の清掃活動にも積極的に参加する海塚市民。

そして、当たり前のように亡くなっていく同級生達。

何気ない日常のなかに隠された恐るべき真実とは…。

 

概要

ジャンルはディストピアです。

時代は現代ですね。

主人公の女性が、少女時代を回想とするいう形で物語は進んでいきます。

もちろんフィクションですが、テーマとしていることは、3・11のことだろうと思うので、かなりメッセージ性の強い作品になっています。

 

 

この小説のここが良い

主人公の少女時代の回想をもとに、当時の何気ない日常から物語は始まります。 

何気ない日常の雰囲気をまとってはいるんですが、怪しい香りがプンプンという感じで終始不穏な小説です。

特に同級生が亡くなるあたりから、言い知れぬ気持ち悪い雰囲気が小説全体にあらわれてきますが、その怪しい雰囲気がこの小説の優れたところです。

 

また登場人物も全体的に気味が悪いんですが、なかでも主人公の母親がいい味が出てます。

主人公のことをめちゃめちゃ束縛するんですね。はっきり言って毒親です。

でも、この母親も登場人物も、さらに言えばこの小説全体の気持ち悪さも、タイトルにあるボラード病の意味を知ることで、理解することが出来ます。

このボラード病の意味がわかる展開からラストにかけてがこの小説のミソですね。

 

3・11の当時、災害が起こったあと何もなかったかのように復興を目指す世論に、何か言い知れない不安感を覚えた私でしたが、この小説が伝えたかったこともそういうことなんだと思います。

あくまでフィクションですが、現実にリンクする部分も多くあり、とても考えさせられました。

 

 

この小説のここが悪い

個人的にはほとんどありません。 

ただ、ディストピアと言っても、ゾンビが出るわけでもなく、秘密警察による統制みたいなものもありません。

また、派手な展開や、SFっぽさもありません。 

あくまでも現代に起こるディストピアと言った感じなので、ひたすら地味です。

そこが好みの分かれるところだと思います。

 

 

この小説のおすすめ度

★★★★☆

星が4つで、おすすめ出来ます。

吉村萬壱さんの作品を読むのは初めてでしたがとてもおもしろく読むことが出来ました。

 

ディストピアだけでなく、人間の愚かさみたいなものも大いに描かれていますので、気になる方読んでみてください。